2018年04月06日

2018年04月06日

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【序章】

 毎年11月の第一日曜日は新庄そばまつりと戸沢村旬の市新そばまつりが開催されている。新庄は以前から日曜日の1日限定の催しで一方の戸沢村は昨年(2016年)迄土曜日曜の2日間に渡って開催されていたが2017年は戸沢村も日曜のみに縮小されてしまった。

従って昨年迄は土曜日に戸沢村の新そばを戴き近くの温泉場に宿を定めてその翌日に新庄を訪問していたのだが今回はこの方式が叶わず新庄か戸沢かの択一を迫られる事態に陥った。

種々の逡巡を重ねた末に今回は新庄そばまつりへの参加を決めた。来年も同じ日程であれば今度は戸沢村を訪問したいと思う。



【新庄そばまつり】

 新庄市は山形県北部の最上地方中心都市でJR奥羽本線の新庄駅は東北新幹線福島駅から分岐する山形新幹線の終着駅となっている。



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8回目を迎えた新庄そばまつりは例年通り山屋セミナーハウスで開催される。以前にも紹介しているが山屋セミナーハウスは廃校となった山屋小学校の敷地建物を活用した施設で市街地中心部の新庄駅から車で東に20分にも満たない至近の里山に位置している。

新そばを振る舞う各地の催しは押し並べて「新そばまつり」と称するが新庄に限っては「新」の文字を省いた「そばまつり」である。言うまでもないが「そばまつり」で提供されるそばは収穫したての最上早生(もがみわせ)の新そばである。



【予約の手配】

 昨年の訪問時に次回の案内を希望するアンケートを残してきた御利益で自宅に開催通知の葉書が舞い込んだ。

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引換券

電子メールで新庄市農林課に前売券の予約を依頼するとやがて引換券の葉書が届くので当日持参して前売券を購入することになる。因みにそば2食分を含んで\1000で販売される前売券と1食分\600の当日券は大石田町の新そばまつりと同額の設定である。



【新庄への道筋】

 仙台市北端の自宅から山形県北部最上地方の新庄市へ向かう主要なルートは三つの候補が考えられる。

第一候補は関山越えのR48で東根市から山形県内をR13で新庄まで北上する。

次は宮城県内をR457で北上し加美町中新田でR347に乗り換えて西進した鍋越峠から山形県尾花沢市に下りてR13を北上する。

第三は宮城県内のR457を岩出山まで北上してR48に移り陸羽東線と併走して鳴子温泉から中山峠(堺田峠とも)経由で山形県に入り最上町を横断して新庄市に達するもの。

 今回は過去の経験から10月初旬の紅葉期に最も混雑が少ないであろう第二候補の鍋越越えを選択した。

この時期は鳴子峡の紅葉が盛りで広い駐車場があるにも関わらず収まりきれない車が溢れてR47の国道上に大渋滞が発生するので第三候補の鳴子経由は何よりも回避したい道筋である。また第一候補のR48関山越えはさくらんぼが稔る初夏には東根や天童の果樹園に向かう車列の渋滞が恒例となっている。紅葉の時季にはそれ程の混雑を心配する必要はなさそうだが仙台市と山形県中心部の村山地方を直接結ぶ幹線中の幹線道路で常に多くの車両が通行しており週末の午後にもなると仙台市内上愛子(かみあやし)付近から中心部方向へ戻る車列の渋滞の発生が恒常的となっている。

 鍋越峠R347の沿線は11月初旬の紅葉期にあっても見るべき観光施設がなく距離は長いが予想に違わずスムーズに通り抜けることができた。以前の鍋越峠超えは国道にも関わらず冬季に閉鎖される峡路であったが宮城県側の改良工事が進んで数年前から通年通行が可能となっている。中新田中心部から西に向かい鍋越トンネルを越えて尾花沢市のR13に達する迄1時間を要し更にR13バイパスを凡そ30分北上して新庄市の中心部に達した。



【そばまつりの会場】

 会場の山屋セミナーハウスは嘗て小学校の校舎であった2層構造の鉄筋コンクリート造の左側に体育館の建物が繋がっている。

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山屋セミナーハウス全景

建物の手前に広がる南向きのグランドは白線を引いて臨時の駐車場に充てられている。

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受付

会場到着は11:30頃となり係員の誘導に従って車を停めて先ず玄関内の受付に向かう。ここで引換券の葉書を提示して前売券を購入した後に整理番号券を受け取る。

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入場券と整理番号

今回は直前に同行者が増えたので2食分の前売券に加えて1食の当日券も購入した2名分の整理番号は590番台であった。この番号順に体育館に設営されたそば食会場に入場して新そばを味わうことになる。

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整理券の特典

整理番号を記した券はA5版で持ち運びに煩わしさをを感じる程の大きさだが裏面には特典として市内のそば店や物産館の協賛施設で利用できる割引券が印刷され翌日から11月末日迄の使用期限が設定されている。



【屋外ステージ】

 整理番号が案内されるまで建物内に用意された待合室に待機したり建物前のグランドに並ぶテント掛けの出店を覗いて時間を過ごすことになるが今回は体育館前のグランドにウイング荷台の大型トラックで仮設の屋外ステージが設営されていた。大石田や尾花沢の催しではトラック荷台の仮設舞台が常套手段だが新庄では前年迄体育館内の既設舞台が利用されていたので屋外の設置は新しい試みである。

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屋外ステージ

会場内舞台で行われていたアトラクションは入場中の限られた人数がそばを食する間の短時間に限られてしまうので入場待機中やそば食後の来場者も見物の機会に恵まれる屋外への移行はより多くの来場者に開放された好ましい変更と感じた。

トラックの手前には入場可能な番号案内も掲出されて

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新庄そばガールズ

この仮設舞台では毎年恒例で新庄そばガールズが踊る新庄そば音頭も披露さる。そば音頭以前のそばまつりの公式(新庄市農林課)動画が公開されているので興味があれば参照されたい。

新庄市のweb記事に依ると新庄そば音頭は市職員2名の共同作詞を同市出身のギタリスト兼作曲家の森正明氏が作曲し歌唱はクラウンレコードの演歌歌手成世昌平(なるせしょうへい)氏が担当しているそうでレコーディング等の制作費は森正明氏の郷土貢献で賄われているのだとか。因みに森正明氏は坂本冬美が唄い某焼酎メーカーのCMで広く知られた「また君に恋してる」の作曲者でもある。

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ステージ予定表

会場出口付近に掲出された屋外ステージの予定表を見つけたのはそば食を済ませた後であった。

既に画面で紹介した「山屋若連」の太鼓演技や新庄そばガールズのそば音頭のステージが組まれている。



【出店】

 セミナーハウスに変わった旧小学校玄関の屋外の左右に

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出店1

テントの出店が並び地元産の野菜の販売や

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出店2

そば会場に持ち込む天ぷらの提供が行われている。この天ぷらを購入すれば会場内で供されるそばを天ぷら添えに仕立てることができる。

野菜の販売店を物色して白菜と長葱に加えて大根に見紛う細長い形状に紫色を帯びた地場産の蕪を購入した。因みにこの蕪は薄切りの酢漬け加工が美味である。



【そば食会場】

 整理番号の入場が案内されてそば食会場の体育館入り口へ進む。会場内の配置は例年と変わらぬ様子である。

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そばを受取る列

右手の壁面に沿って奥へ1食目のそばを受け取る行列があり最後部に並ぶ。この会場では冷そばと温そば即ちもりそばとかけそばの選択肢が用意されている。上の写真にも見えているが温そばは右、冷そばは左の列に分かれて並ぶ。

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会場風景

行列で待つ間に客席を眺めるとフロアのテーブル席に前回迄はアトラクションが披露されていた舞台上に小上がり席と案内される座卓席が加わっている。先に紹介した通りアトラクションは屋外ステージに移動しているので空いた舞台上を客席の拡張に利用したものと思われる。



【小上がり席の設え】

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小上がり席

 舞台上の座卓席は板張り床に茣蓙が敷き詰められ座布団も用意されて正に小上がりの雰囲気を醸し出しておりそばまつりの会場では斬新な試みと感じる。しかし受け取ったそばや手荷物を両手に抱えてフロア席から舞台に上がり履き物を脱いで着席する必要があり特に履き物を脱ぐ動作が高い障壁となってしまうので実際の利用者が少ないのは残念である。私も利用を考えたが脱靴の煩雑さに負けてフロア席を選んでしまった。靴を脱ぐ位置に手持ちのそばを仮置きできるテーブルでもあればこの障壁は解消されるのではないだろうか。この小上がり座卓席は一度に50人が着席できる広さを有している。

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フロア席の景色

小上がり席が設定された舞台上の一段高い視点から入口方向にフロアのテーブル席を望むと会場の盛況ぶりが俯瞰できる。



【フロア席】

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飲料水の提供

 入口に近いフロア席の一画には紙コップで飲料水のサービスと天ぷら販売コーナーも設置されている。

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天ぷら販売

販売されている天ぷらは屋外の出店から運び込まれるので撮影時は在庫が尽きた状態に見えたが1パック\200の格安設定である。

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もりそば1食目

受取口で手にした1食目のもりそばが載る盆を捧げながら舞台上の小上がり席を横目に見てフロア席に着いた。そば盆をテーブル上に安置して一息つく。冷そばの盆には広口の塗り椀に載るもりそばとつゆ猪口に漬物の小皿が添えてある。

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テーブル席の装備

テーブル上には刻み葱、練りわさび、七味唐辛子の薬味3品とそば湯を入れた薬缶や緑色のアンケート用紙等が配置されている。



【最上早生の新そば】

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もりそば

 白味が勝るそばは褐色の細かいホシが鏤められた細切り麺に仕上げられており標準的な二八そばの風貌に見える。

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手打ちそば

割り箸に掬うと2~3mmの細麺に混じって手切りの端材に見える5mm程の太麺も現れるが細切り麺が大多数を占めている。

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わさび風味

そば食の後半に薬味に用意されていたわさびを試してみたが刺激の強さに反して山葵本来の甘い風味が弱くちょっと残念なものであった。

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そば湯

食後のつゆにそば湯を加えて薬味の刻み葱を浮かべたそばスープをいつも通りに味わって1杯目のそば食を終える。

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食器返却口

空いた容器はお盆毎食器返却口に持参しその足で2食目の受取口へ進む。

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もりそば2食目

2食目も冷そばを選択するが受取口に行列は無く僅かな待ち時間でもりそばを受け取る。半月形の盆に載るそばとつゆ猪口に添えられた漬物は1食目と全く同じ組み合わせである。

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2食目のそば

そばの太さは不揃いで時々4~5mmの太麺が混じっているのも1食目と同様だが二八そば故の柔軟な腰があり啜り上げて口に運ぶことが出来る食しやすい仕上がりであった。

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2食目のそば湯

2食目の食後にも残りつゆのそば湯割を楽しんで最上早生のそば食を終えた。



【新庄そばまつりの規模】

 食後の会場出口でアンケート用紙に記入して来年の案内葉書送付を依頼し会場を後にした。

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整理番号

屋外ステージで披露される太鼓演奏やそば音頭の踊りを一通り見物して帰途に就く直前の13:30頃に会場入口を覗くと整理番号は1250が表示されていた。一日に1200名以上の来場者に備える新そばの催しは老舗の大石田町の規模に迫るもので全てが前売の2食券ではないとしても2000食以上のそばが必要であったと思われる。



【帰途:紅葉鳴子峡の渋滞】

 帰途は混雑が予想されたが紅葉が真っ盛りの鳴子峡を経由するR47を選んでみた。山形県内は順調に走行できたが宮城県に入って中山平温泉を過ぎる辺りから渋滞の車列に巻き込まれてしまった。暫く一寸刻みののろのろ運転を続けると鳴子峡の駐車場に達し国道へ戻ろうとする大量の車をこれまた多数の誘導員が捌いている様子が見えてくる。R47は県境を跨ぐ幹線国道ではあるがこの区間は片側1車線で駐車場から数十台単位の車が合流する間国道上の車は完全停止を余儀なくされる。この時期には少し離れた周辺の臨時駐車場もフル稼働しているので同じ光景が何度か繰り返し出現する。

これが秋の鳴子峡大渋滞の実態で合流が終わった先も鳴子トンネルを抜けて鳴子温泉街に下りR108花渕山バイパスが左手の鬼首方向に分岐する信号交差点まで続く。渋滞に嵌ってからここ迄の僅かな距離の通過に40分程を要した。この先は温泉街を掠めて江合川に沿う平坦路から川渡バイパスに繋がる区間で車の流れは一旦回復するが池月地区にある道の駅岩出山に近付くと再び渋滞に遭遇してしまった。これは古川市街迄続きそうなので複雑な脇道を経由する魔法の手段を駆使してR457に抜け帰宅することになった。



【終章】

 8回目とされ最上早生の新そばを振る舞う新庄そばまつりは1200名以上の来客が訪れる盛況な催しであった。

今回初めて採用された屋外ステージのアトラクションは他の地域の新そばまつりでも定番となっているが会場内の舞台を活用した小上がり席の設定は斬新な試みとして賞賛に値する。但し利用者の観点からは本文中で指摘した様に使い勝手に難点があるので利用し易い小上がり席が実現できる改善策を期待したい。








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